不妊虫放飼、セクサロイドと人類の破滅

不妊虫放飼という害虫の駆除方法があるそうです。この方法では、人工的に、交尾を行っても産卵できないようにした害虫を大量に放ちます*1。するとどうなるかというと、元から居た害虫が不妊化された昆虫と交尾した場合、産卵ができなくなります。結果として、害虫を駆除することができる、という駆除法です。現在のところ、害虫を完全に根絶するほぼ 唯一の方法だと言われています。

http://ja.wikipedia.org/wiki/不妊虫放飼

 

 

さて、高校のころ初めて書いた、というか書こうとしたSF的な小説が、 この不妊虫放飼にアイデアを得て、これを人間に対して適用したものだったのです。プロットはこんな感じ。 

 

「近未来の日本で、安価で性能の良いセクサロイドが開発される。セクサロイドたちは全て絶世の美男美女であり、自分だけに愛情を持ち、エネルギーの補給や清掃のメンテナンスフリーで、しかも何も要求せず、行動だけ見れば人間と変わらないが、自我を持たないため、飽きたら捨てても何も文句を言わない。そういう理想の恋人を、誰もが持つことができるようになる、そんな社会。」 


「当然、誰もわざわさ手間と時間を掛けて、不確実で傷を負うかもしれない、本物の人間相手の恋愛、結婚そして出産をしなくなり、出生率は激減する。

実はそれは、人類の 滅亡をのぞむ悪の組織()の陰謀だったのだ! 彼らは誰も傷つけず、誰も殺さず、ただ全ての人々の自由意志による選択によって、新しく生まれてくる子供を抑制し、人類全てが老衰で死に絶えさせるために、そのようなセクサロイドを開発し、安く販売したのである。」

 

そして、 小説の最後で、主人公である人類の最後の男が老衰で死んだあと、地上にはセクサロイドたちだけが残されます。

 

彼ら/彼女らは、部分的にはヒトの感情をエミュレートし、人間らしく振る舞う機能を持っていますが、そもそも自我を持たないために、性行為が今は無き人類にとってどういう意味を持っていたのかを自覚することはありません。

 

人類が居なくなった地球上で、セクサロイドたちは、太陽が膨張して地球を飲み込み地球が破滅するまで、延々とセックスをし続けるのです。 

 

その光景は、 人類の破滅の風景としては、とても淫靡で、静謐で、平和だと思います。

*1:例えば放射線を浴びせるなどすると、生殖細胞は他の細胞より放射線に対する感受性が高いので、生殖細胞を死滅させても昆虫は元気なままで不妊化できると言われています